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2008-11-01

リーマン・ショックと「タイタニックの乗組員」~鈴木美伸 ステージ・フォー・ワン代表取締役

リーマン・ショックと「タイタニックの乗組員」~鈴木美伸 ステージ・フォー・ワン代表取締役

 解雇された社員が段ボール箱を抱えてオフィスビルから次々と追い出されてくる。リーマン・ブラザーズの経営破綻には世界中が驚かされたが、米国のTVニュースで報道されたそのシーンは過去何度か目にしたものだった。TVドラマでもたまに使われるシーンで、転職大国の米国ではそれほど珍しいものではない。

私自身が勤務していた米国企業でもリストラは何度かあった。TVニュースやドラマでは報じられないビルの内側のシーンを見てきたわけだが、それはまるで沈みゆくタイタニックからの脱出活動だった。

 私が勤めていた米国企業は2000年前後のITバブルの絶頂期に急成長した西海岸のITコンサルティング企業だった。NASDAQに上場しており一時期は$150もの株価をつけていたが、ITバブル崩壊で急速に業績は悪化し、経営トップからは有無を言わさず3日間で400人のリストラが決定された。

 私が所属していたリクルーティングのチームはその指示のもと、急遽リストラが決定された社員に対して退職相談を始めた。私自身のキャリアは企業人事だったが、米国のリクルーティング担当者の多くは人材紹介業出身の者が多かったため、その人脈からリストラされる社員の転職先を献身的に斡旋した。

 一人一人のキャリアをヒアリングし、他企業のリクルーターや人材紹介業に紹介していくさまは、まさに沈みゆく豪華客船の乗客を救命ボートに乗せている乗組員のようだった。(実はちゃっかり紹介料を稼いでいる者も居たようだが)

 このような状況では、当然ながらデキル社員から転職が決まっていくので、本当に優秀な社員なら転職先に困ることはない。豪華客船からの避難なら弱者から先に救済されるのだろうが、大規模リストラの場合は強者から先に出ていってしまうことになる。

 しかも優秀な社員ほどいち早く逃げ出しているから、TVニュースで報道されて一般に知られる頃には市場価値の低い(転職の困難な)人材だけが残っているものである。

 そのため、他企業の採用担当者が慌てて良い転職者を引き抜こうとしても手遅れになっていることが多い。(今回のリーマン・ショックはあまりに突然だったので逃げ出す時間も無かったかもしれない)

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